植野が斬る!

考え方を変える時代!

1.はじめに  

中東問題によるナフサ不足が言われ、様々な部分で品不足が起きています。建設資材や人件費の高騰が大きな問題になりつつあります。私が住んでいる栃木県小山市では、指定のごみ袋が店から消えている。市役所に尋ねると、「あるはずだから、自分で探せ」である。

今後の社会の最大の課題は、人口の減少です。これがわかっていない方々が結構多い。これは国力にも影響します。4月23日に、政策研究大学院大学において、国土交通省の廣瀬技監をお招きして、新講座のキックオフイベントを実施しました。不肖私は、新講座の塾長となります。中身に関しては次回くらいに触れます。5月14日のインフラメンテナンス国民会議の全国首長会議が、新副会長として最初のお仕事でした。金子国土交通大臣をお招きして盛況な会となりました。今後、インフラメンテナンス国民会議の副会長としても、皆様の前に見たくもない顔を出しますのでよろしく。

2.マネジメントの重要性

このところ、マネジメントに関して書いています。マネジメントの重要性を皆さんにわかっていただきたいからです。我々土木技術者はどうしても個々の技術にこだわりがちです。それはそれで基本として重要です。しかし、今後はマネジメントということが非常に重要となります。いわばこれは技術論というよりも「精神論」や「哲学」です。

これまで書いたように、どうもそれを理解できない方々が非常に多い。これは、今の技術教育の弱点であります。これを理解できるかどうか、それも問題ですが。日本の技術教育は細かいところにこだわりすぎていて、全体を見通す力に欠けている。技術=研究だと思っているところもあります。土木系の協会をいくつか見ていますが、役員や会員を「実務団体」とすべきところに「研究団体」を意識してしまっている。意識するというのは少々雑ですが、憧れてしまっているんだと思います。憧れるのは良いですが、研究者ばかりは要りません。研究団体とすれば土木学会には敵いません。

様々なインフラ系の展示会などが実施されますが皆さんどういう感覚で見ているでしょうか?

先日、ある展示会へ行きました。維持管理系であったが、多くのブースに若手の方々がたくさんスタッフとしていました。私が回っていくと出てきて、いろいろ説明してくれますが、結構多くのブースで「群マネ」に関し、レクチャーくださる。笑えますね。私は、委員なんですけどね。皆さん、勉強していないのかな?

「群マネですか?」「一応知ってます」と言うと、もう自信満々に話し始める。心の中は「へ~!俺はあんた知らないけどね。言っていることも違うね!」だ。

最近の若い子たち(こういうとおっさんくさいが、おっさんなので)は、自信満々な方々が多い。まあ、良い面もあるが、私は社会に出て数年、全然自信がなかった。必死で先輩の物まねをしていた。仕事をこなしていき、1人で仕事を任されて、やっと1人前になれたような気がしていた。しかし、最近は違うようだ。そういうふうに教育されているのかもしれない。

展示業者が勉強していないこと。これは致命的です。本来は、これでは進みません。新技術などと言っても自己満足では、絶対に進みません。これが分かっていない。そもそも、どこの誰がそれに長けているか?発注者・官側にだって、それなりの方々は大勢います。それを分かっていない。また、新技術を使ってくれてお金を出してくれるのは、官(発注者)。そこを理解できていない。これってあたりまえの話なんです。自己満足で自信満々に説明しても鋭い方が来れば一瞬で、叩きのめされます。これが現実です。これもマネジメントです。

3.マネジメントへ舵を切れるか?

細かい技術、それは単発の技術で、技術者としては必要な能力ではある。どういう技術者になりたいかは自分で決めるべきで、自分に合った技術者になっていけばよい。

これまでの「造る時代」では、1件1件の発注がほとんどで、まとめる(包括)発注は、あまりなかった。しかし、今、「群マネ」ということが叫ばれ出すと、様々な自治体が「包括管理」に移行し始めた。例えば点検業務をまとめて発注するなど、当たり前のことを始めた。こういった流れになってくると、「技術のスペシャリスト」という条件も変わってくる。マネジメントが重要になってくるので、総合的な知識やバランスが重要になっていく。自分の専門性を生かしたいのはよくわかる。だが、それだけでは駄目で、他の分野や枠を超えた考え方もできないとマネジメントはできない。

本来、事業とは様々な事柄を含んでいる。全体を把握し実施しなければならないが、それは簡単ではない。マネジメント思考を育てるには、幅の広い思考が重要である。多くの経験を積み、多くの失敗を重ねなければ、これは醸成しない。日本の社会は、非常に失敗を嫌がる。そして、すぐに正解値を求めたがる。狭い了見に固執し、経験もないのに分かったふりをする。これではマネジメントは出来ない。

ヒトにはそれぞれ役割がある。職人、技術者、研究者。どれも社会にとっては重要である。私は個人的には、実務者・実行者になりたいと思ってきた。実際に物事を考え、実行する人間。それがマネジャーである。マネジャーは物事を何とかしてまとめなければならない。厄介であるが、面白い。実行しているうちに失敗もある。思ったようにいかない場合も出てくる。ぺーぺーのうちは感じなかった感情である。ぺーぺーの頃は言われたこと・指示されたことを自分の分だけ実行すればよかったが、だんだん周りのことも考えなければならなくなる。そして、それが社会にどう影響するのかも考えなければならない。ここで一番重要なのは時間である。

我々の世界ではLCC(ライフサイクルコスト)というもの、この算定が非常に甘い。コストの面だけでも甘いが、時間に関しては非常に甘い。これによって、将来へのマネジメントも希薄になっている。

4.まとめ

技術者が仕事をする上で、問題がなければそれで幸せかもしれないが、個人的には、修羅場をくぐり、苦労したほうが面白いと思っている。どうしようか?考えて考えて解決していくと、終わったときの達成感は格別である。これも自分マネジメント。

インフラマネジメントは終わりがない。これに取り組まなければならない時代に突入してしまった。1970年代に構築した大量のインフラが、今後牙をむいて襲ってくる。この高度成長期に、きちんと品質が確保されていればかなり楽だが、実際に状況を見てみるとそうではない。いい加減なものが相当数ある。地域差もあるだろうし、建造した組織にもよる。

これまでの日本の仕組みでは、マネジメントをあまり考えないで済むようになっていた。構造物においても、材料種別(コンクリート、鋼)ごとのコード(基準)が別々、個別発注や分業、設計施工の分離等。これは今後の社会において大きな損失であるが、そうしてきたのだ。ある意味、楽をしてきたのだ。ここで考え方を変えていかねばならない。

「考え方を変える時代!」

インフラメンテナンス 総合アドバイザー

植野芳彦

PROFILE

東洋大学工学部卒。植野インフラマネジメントオフィス代表、一般社団法人国際建造物保全技術協会理事。
植野氏は、橋梁メーカーや建設コンサルタント、国土開発技術研究センターなどを経て「橋の専門家」として知られ、長年にわたって国内外で橋の建設及び維持管理に携わってこられました。現在でも国立研究開発法人 土木研究所 招聘研究員や国土交通省の各専門委員として活躍されています。
2021年4月より当社の技術顧問として、在籍しております。