プロジェクトストーリー

山川町地内 道路災害復旧設計

安全・安心なくらしのため災害復旧事業に第一線で対応

2018年8月16日の豪雨により金沢市山川町地内の道路斜面が崩壊しました。当社社員は8月17日から現地調査に着手し,応急対策・恒久対策に向けて迅速,確実に災害復旧事業を進めました。

(被災規模)
∙ 崩壊した幅:W=30m
∙ 崩壊した長さ:L=50m
∙ 崩壊した深さ:D=5m
∙ 崩壊した土量:V=8,000m3

斜面崩壊の全景

(地形概要)
当該箇所は金沢市街地より南東へ約7kmに位置し,富樫山地にあります。富樫山地は加賀山地の前山的性格をもつ小起伏山地であり,加賀山地との間に特に明瞭な境界はありません。周辺の自然斜面は傾斜約35度で,植生は竹が繁茂しており,また崩壊斜面より下方は内川支流のかまんたに川によって下刻されています。冠頂部は平坦面が形成されており,これは第四紀更新世後期(低位,中位)の段丘面です。


斜面崩壊箇所平面図

(地質概要)
当該箇所では,新第三紀中新世中期に形成された七曲層が露頭しております。七曲層は浅野川沿岸の朝加屋から上辰巳,山川および額谷にかけて分布し,下位の砂子坂層との関係は一般に漸移的であるが,浅野川沿いの湯涌街道では局地的不整合関係が認められています。本層は主として凝灰質砂岩・泥岩、軽石質凝灰岩および白色細粒凝灰岩の互層からなり,特にその上部では単層の厚さ50~100cmの板状互層が著しいです。層厚は額谷付近で約60m,平栗付近で約100m,山川南方で約60m,浅野川沿岸で約30~40mとされています。本層の一部には玄武岩質火砕岩層が局部的にはさまれるが,これは普通輝石カンラン石玄武岩の集塊岩状の溶岩で,全般的に黒色を呈し,方解石でみたされた多数の孔隙を含むものであります。厚さは黒壁付近で最大約50mであるが,平栗・山川付近では次第に薄くなり遂に消滅します。

(調査結果)
ボーリング調査では,最下位に新鮮でマッシブな泥岩(Md層)があり,その上位にはMd層との境界がほぼ水平となる風化泥岩(w1-Md層)が分布していることが確認されました。この風化泥岩(w1-Md層)の亀裂面は褐色化して軟質となっており,崩壊後に露頭した風化泥岩には条線が認められ,風化泥岩上面あるいは風化泥岩の亀裂を不連続面としたすべりが発生したものと考えられます。

地質断面図

(被災原因)
泥岩が流れ盤構造で泥岩の上位に脆弱な地質が厚く堆積した状況で,1時間雨量44mmの豪雨があり,異常な間隙水圧が発生したことによって泥岩を基盤としたすべり崩壊に至ったと考えられます。
崩壊中腹部に泥岩の露頭が確認され,滑落崖部は土砂(粘性土),右側方崖部は強風化泥岩,左側方崖部は風化泥岩が認めれることから脆弱な部分が崩壊したと考えられます。

(復旧工法)
崩壊して残った土砂は水を含んで非常に脆弱(オーバーコンパクション)であったため,崩壊土砂を撤去し,原形に近い補強土壁工および補強盛土工により復旧しました。本工法の主な材料は土であり,迅速な復旧工事が可能となりました。

対策工施工状況
補強盛土工(完成後)
補強土壁工(完成後)