プロジェクトストーリー

あやとり橋梁点検

山中温泉の景勝地 鶴仙渓に珍しい形の橋「あやとりはし」があります。この橋はS字曲線となっており形状・構造ともユニークなデザインです。当社はこの「あやとりはし」の橋梁点検を行いました。点検の方法や創意工夫など、点検を実施した浅岡 毅(インフラ保全事業部 部長代理)に聞きました。


ーあやとり橋はS字形のトラス橋で珍しい構造ということですが、改めてこの橋の特徴を教えてください。

1991年(平成3年)に架設された橋長94.7m、歩行者通行幅1.5mの曲線単純逆三角ワーレントラス橋です。点検は2022年(令和4年)に行ったので点検時には31年が経過していました。形状は平面的にS字曲線、縦断においても両岸の高低差を利用したゆるやかなS字形となっています。そのため、断面はねじりに強い逆三角形で、上弦材・下弦材、斜材、横構、支材などの部材で格点構造を成した三弦トラスとなっています。逆三角形の内側には、通行用の木の橋床と手摺が設けられています。

ーあやとりはしの点検について、事前に管理者より相談がありましたか。

管理者からは、本橋は観光名所であり重要施設と考えているが、道路橋に該当しないため法定点検を行っていない。塗装塗替などのメンテンスは何度か実施しているが、構造が複雑で部材数も多いうえ、作業できる幅員が通行幅員の1.5mと狭いため、点検方法に苦慮しているとの相談がありました。

ー点検を計画するにあたり気を付けた点を教えてください。

鶴仙渓を訪れる観光客の皆さんに、迷惑がかからないように注意しました。
周囲に温泉旅館があるため、露天風呂の利用者が上空からの撮影に対して不安を抱かないように配慮しました。管理者から観光協会へは事前にあやとりはしの点検を行うことを周知して頂き、観光客の少ない週の初めに点検を実施するようにしました。さらに、鶴仙渓遊歩道には広範囲に点検実施中の看板を設置し、観光客の皆さんが戸惑わないようにしました。

ー点検を計画するにあたり工夫した点はありますか。

当初は、ロープアクセスによる点検仕様となっていました。しかし、複数のロープ作業者が橋梁に吊り下がり点検する様子は、周囲に誤解を生じかねないうえ、高所で輻輳する作業は危険を伴います。そこで、全部材を点検できる方法を、新技術を含めて検討しました。

ー新技術など、点検で取り入れた方法を教えてください。

地上からの点検に加えて、次の4種類の新技術をそれぞれの長所を生かし複合的に活用しました。

1)自立飛行型ドローン
自動飛行により操縦士が機体を視認せずに360°の周囲を自動認識し、橋と一定の離隔を保ちながらの撮影が可能です。主に上弦材等の路面上面の点検支援に使用しました。

2)橋梁点検支援ロボット
幅員が1.5mと狭い歩道でも、遠隔操作で撮影が可能な点検カメラを取り付けたロボットです。継ぎ足し式水平アーム先端に点検ロボットカメラを取りつけ、自走式タイヤの台車(0.5m)をベースマシンに用いることで、ベースマシンから操縦者が遠隔操作で撮影することが可能です。主に桁下部分の点検支援に使用しました。

3)点検ロボットカメラ
操作端末に表示した画像に、疑似的なクラックスケールやL型スケールを点検者操作により 表示することができ、変状の大きさを定量的に 計測することが可能なカメラです。これは2)橋 梁点検支援ロボットに設置しました。

4)次世代 360°カメラ
全方位の撮影が可能で、主に格点部の点検支援に使用しました。

ー点検中に何かトラブルはありましたか。

管理者との協議であやとりはしは通行止めとして点検することとしました。観光シーズンを避けた 12 月に点検を実施しましたが、先ほどの新技術は精密機械なので天候に左右されます。点検当 日、悪天候に見舞われたため、稼働は天候が回復する時間を見定めながら行い、想定以上に時間 がかかりました。また、関係各所への事前周知は行いましたが、当日県外から来訪された観光客ま では浸透できず、観光客が訪れるたびに点検を中止しながら、何とか日暮れ前までにやり切りまし た。

ー点検を終え、新技術などの点検方法で、これまでと違った成果はありましたか。

これまでのロープアクセスなどによる点検では、悪天候の場合、点検員の事故の可能性があるた め中止の判断をしていました。しかし、新技術を採用したことで、限られた時間内ではありました が、安全にかつ確実に点検を終了できたことが大きな成果です。また、新技術による高解像の画 像の取得により、短時間で精度の高い点検を行うことができました。点検後の管理者との協議で は 360°カメラの特性を生かして様々な角度から各部材を撮影した画像を提示できたため、複雑 な橋ではありましたが、お互い納得のいく合意形成が図れたと思います。

ー今後の橋梁点検について、考えていることなど、聞かせてください。

道路橋において 5 年に 1 度の点検が法制化されてから 2 巡目を終えようとしていますが、管理 者は点検費用が予算を圧迫し、補修工事にまで手が回らず苦心している状況を肌で感じています。 今後、管理者に新技術を積極的に提案・活用し、費用負担を低減できる技術者としてインフラの維 持管理に貢献していきたいと考えています。